相続放棄はどうやるの②

(2011年03月30日)

3月22日のコラムで相続放棄について書きました。
内容としては、相続の放棄・相続放棄の手続き・3か月の
熟慮期間について話をしました。
今日も3月22日のコラムの続きについて話をします。
 
□熟慮期間の起算点
3か月の熟慮期間は、原則として、相続人が自分のために
相続があったことを知った時から起算しますが、自分の為に
相続があったことを知った時とは、どのようなときでしょうか。
 
それは被相続人の死亡事実と自分が法律上の相続人と
なったことの両方を知った時を指します。
 
ところで、街の金融業者の中には、被相続人との交流がなく
相続債務があることを知らなかった相続人に対して、相続放棄
をしないまま熟慮期間を経過するのを待って多額の相続債務を
請求するケースがあります。相続人にとっては、当初から
債務の存在を知っていれば、当然放棄をしたはずです。
 
そこで、裁判所は、このような相続人を救済すべく、一定の
条件のもと、熟慮期間の起算点を遅らせて相続放棄が
できるようにしました。
 
最高裁判所は、相続放棄の熟慮期間は、原則、相続開始の
原因たる事実(被相続人の死亡)とこれにより自分が法律上
相続人になったことを知った時から起算すべきであるが、
相続人がこれらの事実を知った時から3カ月以内に相続放棄
をしなかったのが、①被相続人に相続財産が全くないと信じた
ためであり、かつ、②被相続人の生活歴、被相続人と相続人の
交際状況その他諸般の状況からみて、その相続人に対し
相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情が
あり、③相続人が相続財産が全くないと信ずる相当な事情が
あると認められるときは、熟慮期間は相続人が相続財産の
全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識
しうるべき時から起算すべきであるとしています。
(1984年4月27日判決・民事裁判判例集38巻6号698ページ)
 
この事案は、被相続人が定職に就かず、ギャンブルに熱中し
家庭を顧みなかったため、妻は離婚し、相続人である子らは、
相続人と別居し、約10年間親子間の交渉が途絶え、
生活保護を受けていた被相続人には一切の相続財産が
ないものと思って熟慮期間を経過したところ、被相続人の
債権者から相続債務の履行を求められたというものであり、
熟慮期間の起算点を債務の存在を知った時としたのは
相当といえます。
 
なお、下級審の裁判例の中には上記最高裁判所の示した
基準を若干緩和して適用したものもあります。