6月末時点における平成23年度税制改正の決定項目と先送り項目の整理

(2011年07月22日)

平成23年度税制改正法案の成立は、民主党政権の混迷や
東日本大震災の影響で、先の見通しが立たない状況が続いて
いました。

しかし、当初の法案が2つに分割され、課税の適正化など
「改正実施可能項目」だけを切り出した法案が6月末に成立し、
残りの「抜本改革項目」は、すべて先送りして法案を継続審議
するという従来にない形となりました。
 
そこで、当初の税制改正法案について、6月末時点で決定した
項目と先送りされた項目とに分けて整理し、併せて、適用期日や
適用期限等も確認できるようにまとめました。

FPに関連する主な項目は、以下の通りです。


1.個人所得課税(所得税・住民税)
■決定項目

【1】年金所得者の申告手続きの簡素化と人的控除の見直し
1)公的年金等の収入金額が400万円以下で、公的年金等の
雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合、所得税の
確定申告書の提出が不要となります。
この改正は、平成23年分の所得税から適用されます。
 
2)公的年金等の源泉徴収税額を計算する際の人的控除に
ついて、寡婦(寡夫)控除が追加されます。この改正は、
平成25年1月1日以後に支払われる公的年金から適用されます。 

【2】所得税の還付申告書の提出期間の見直し
所得税の還付申告書について、申告義務のある人は翌年
2月16日から提出できることになっていましたが、翌年1月
1日から提出できるようになります。
早く提出した分だけ早く還付金を受け取ることができるように
なります。
この改正は、平成23年分の所得税から適用されます。 
  
■先送り項目 

【1】給与所得控除の見直し 
1)給与所得控除の上限設定
給与収入が1,500万円を超える場合の給与所得控除額に
ついて、245万円の上限設定は先送りされました。
 
2)役員給与等にかかる給与所得控除の見直し
収入金額が4,000万円超という特別に高額な役員給与について、
給与所得控除額の2分の1を上限とすること、2,000万円を超え
4,000万円までの間では、給与所得控除額の4分の3を上限と
することが先送りされました。 

【2】特定支出控除の見直し
特定支出の範囲の拡大と適用判定の基準の見直しが先送り
されました。 

【3】退職所得課税の見直し
勤続年数5年以下の法人役員等の退職所得について、2分の1
課税の廃止が先送りされました。
個人住民税の退職所得課税についても同様の措置を講じることが
先送りされ、退職所得にかかる個人住民税(所得割)の額から、
税額の10%を控除する税額控除の仕組みの廃止も先送り
されました。


【4】成年扶養控除の見直し
23歳から69歳までの成年を控除対象とする扶養控除(成年
扶養控除)の廃止が 先送りされました。 
 

2.金融証券税制
  
■決定項目
【1】上場株式等の配当・譲渡所得等にかかる10%軽減税率の2年延長
上場株式等の配当・譲渡所得等にかかる10%軽減税率は、
平成23年12月31日で廃止され20%の本則税率に戻る予定
でしたが、2年間延長されて平成25年12月31日までの適用と
なります。 

【2】非課税口座内の少額上場株式等にかかる配当所得・譲渡
所得等の非課税措置の延期
上記の10%軽減税率の2年間の延長措置に伴い、「非課税
口座内の少額上場株式等にかかる 配当所得・譲渡所得等の
非課税措置(いわゆる「日本版ISA」)」の導入時期が、2年間
延長されて平成26年1月1日からとなります。
 
【3】店頭デリバティブ取引の課税方法の変更
総合課税とされている店頭デリバティブ取引等は、市場デリ
バティブ取引と同様に、分離課税の雑所得として20%(所得税
15%・住民税5%)の税率となります。
 その上で、両者の通算および損失額の3年間の繰越控除が
可能になります。
この改正は、平成24年1月1日以後に行われる店頭デリバ
ティブ取引等から適用されます。 

【4】大口株主等の要件の厳格化
配当等にかかる申告分離課税の対象とならない大口株主等の
範囲について、発行済株式等の総数に占める保有割合が、
現行の5%から3%へ引き下げられます。
この改正は、平成23年10月1日以後に支払いを受ける配当等
から適用されます。
 
【5】金地金等の譲渡にかかる支払調書の提出
金地金等の譲渡について、譲渡対価の額が200万円を超える
場合、支払調書の提出が義務づけられます。
この改正は、平成24年1月1日以後に行われる金地金等の
譲渡から適用されます。
  
■先送り項目 
FPに関連する主な先送り項目はありません。 


3.相続税・贈与税
【相続税】
  
■決定項目  
FPに関連する主な決定項目はありません。  

■先送り項目
【1】基礎控除及び税率構造の見直し
「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」と定められている
基礎控除について、 「3,000万円+法定相続人の数×600万円」に
引き下げる措置が先送りされました。

また、相続税の最高税率を現在の50%から55%に引き上げる
などの税率構造の見直しも先送りされました。 

【2】死亡保険金の非課税措置の縮減
死亡保険金の非課税額「法定相続人の数×500万円」の
算定の基礎となる法定相続人に含めることができる者に
ついて、未成年者、障害者または相続開始直前に被相続人
と生計を一にしていた者に限るとする見直しが先送りされました。 

【3】未成年者控除・障害者控除
相続税額から一定額を差し引く未成年者控除・障害者控除に
関する見直しが先送りされました。


【贈与税】  
■決定項目
  FPに関連する主な決定項目はありません。
  

■先送り項目
【1】税率構造の見直し
相続時精算課税制度の対象とならない贈与財産にかかる
贈与税の最高税率を現在の50%から55%に引き上げると
同時に、税率構造を緩和するという見直しが先送りされました。 

【2】相続時精算課税制度の対象範囲の拡大
相続時精算課税制度の適用要件について、受贈者の範囲に
20歳以上である孫を追加し、贈与者の年齢要件を60歳以上に
引き下げる見直しが先送りされました。
 
4.土地・住宅税制 
■決定項目
 
【1】住宅取得等資金の贈与の特例の適用対象追加
直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の特例(平成23年は
1,000万円)について、土地等の取得に関しては、建築条件
付きの土地取得や建売住宅、分譲マンションなど住宅用家屋と
同時に取得した場合に限られていましたが、土地等を先に
購入してから注文住宅を建てる場合など先行して土地を取得
する場合の資金も対象となります。

この改正は、平成23年1月1日以後の贈与により取得する
住宅取得等資金から適用されます。
 
【2】住宅用家屋に関する登録免許税の特例
住宅用家屋の所有権の保存登記または移転登記、住宅取得
資金の貸付け等にかかる抵当権の設定登記に対する登録
免許税の軽減措置の適用期限が 平成25年3月31日まで
延長されます。
 
■先送り項目
  FPに関連する主な先送り項目はありません。
 
5.法人課税
 ■決定項目
FPに関連する主な決定項目はありません。 

■先送り項目
【1】法人税率の引下げ 
法人税率は、普通法人の場合、現行の30%から25.5%へ
4.5%引き下げられる予定でしたが先送りされました。
また、中小法人の年800万円以下の所得金額に対する
法人税率は、現行の本則税率22%から19%に引き下げら
れる予定でしたが、この部分も先送り
されました。
 
【2】中小法人に対する軽減税率の特例
中小法人に対する軽減税率の特例は、現行の18%から
15%に引き下げられる予定でしたが先送りされました。
現行の18%軽減税率は、平成22年度末に期限切れを迎えた
ためにつなぎ法により6月30日まで延長されていましたが、
さらに、平成24年3月31日までの間に終了する事業年度まで
適用期限が延長されました。 

【3】減価償却制度(定率法の償却率の引き下げ)
平成23年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の
償却率(1/耐用年数)について、現行の2.5倍した数から2.0倍
した数へ引き下げる措置が先送りされました。
 
【4】欠損金の繰越控除制度等の見直し
 1)欠損金の繰越控除限度額を繰越控除前の所得の80%に制限
欠損金の繰越控除制度について、中小法人等以外の法人の
控除限度額は、繰越控除 をする事業年度のその繰越控除前の
所得金額に対する100分の80相当額に 制限するという措置が
先送りされました。 

2)欠損金の繰越期間を7年から9年に延長
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間および
青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の
繰越期間等について、現行の7年から9年に延長 る措置が
先送りされました。
 
6.消費税
 ■決定項目 

【1】仕入税額控除制度の見直し     
課税期間の課税売上高が5億円(その課税期間が1年に満た
ない場合には年換算)を超える事業者は、課税売上割合が
95%以上であっても、課税売上に対応する課税仕入の税額
のみが控除の対象となります。
この改正は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から
適用されます。
 
【2】事業者免税点制度における免税事業者の要件の見直し
基準期間の課税売上高が1,000万円以下である事業者のうち、
特定期間(前期の半年間)における課税売上高が1,000万円を
超える場合には、事業者免税点制度の適用がありません。
この改正は、平成25年1月1日以後に開始する事業年度等から
適用されます。
 
■先送り項目
 FPに関連する主な先送り項目はありません。  

7.生保年金課税
■決定項目 

【1】相続等にかかる保険年金に対する源泉徴収
保険年金のうち相続等にかかる保険年金に対する源泉徴収に
ついては、平成25年1月1日以後に支払うべき保険年金から
廃止されます。
 
【2】特別還付金支給制度の創設
遺族が年金として受給する生命保険金のうち、相続税の課税
対象となった部分については所得税の課税対象としないとする
最高裁判所の判決を受けて、納め過ぎた所得税について、
現行税法のもとでは還付できない年分の所得税相当額の
特別な還付を行うための措置が講じられます。

具体的には、過去5年分(平成17年分~平成21年分)に
ついては、平成22年10月に税務上の取扱いが変更されて
います。
今回の改正では、「特別還付金支給制度」として救済措置が
取られ、平成12年分~平成16年分が還付対象となります。

これにより過去10年分の納め過ぎた税金が還付されることに
なります。
 還付請求期間は、平成23年6月30日より平成24年6月29日の
1年間です。 

【3】養老保険を利用した資金移転の租税回避防止
養老保険を利用して法人から法人の役員に資金移転する際の
租税回避を防止する税制改正です。
具体的には、法人を契約者および死亡保険金の受取人、法人の
役員を被保険者および満期保険金受取人として、役員が生存
していた場合は役員が満期保険金を受け取るという内容の
短期の養老保険契約を結びます。

法人が負担した保険料のうち、死亡保険金に対応する部分は
保険料として損金経理し、満期保険金に対応する部分も被保険者
への給与として損金経理します。
役員の受け取る満期保険金は一時所得となり、一時所得の
計算上は、役員の負担した保険料だけでなく法人負担の
保険料も満期保険金から控除できる保険料として申告する
ことにより、法人税・所得税の両方の観点から税負担を
軽減できるスキームです。

このようなスキームに対して税制が改正されました。
改正内容としては、生命保険契約の満期や解約として受け
取った年金または一時金について雑所得または一時所得を
計算する場合には、その支払いを受けた金額から控除できる
保険料や掛金は、給与所得にかかる収入金額に算入された
金額に限るという内容です。 

■先送り項目
FPに関連する主な先送り項目はありません。