国際財務報告基準(IFRS)の導入に関する米国の新たな動向等について②

(2011年07月16日)

先週のこらむにおいて、国際財務報告基準の導入に関する
米国の新たな動向について話をしました。
 
今日も、この話をしたいと思います。
 
米国のIFRS対応方針は2011年末までに公表されます。
米国のIFRS対応を考える前に、次のことを確認しておく
必要があります。
 
第1に、資本取引がグローバル化し、会計基準の比較可能性を
確保することの重要性については、米国と国際会計基準審議会
(IASB)とも認識を共有しております。
 
第2に、従来の取得原価主義会計の目的は、投資家、株主、
債権者、経営者、従業員、取引先、国、地方自治体等の
多様な利害関係者への意思決定に有用な財務情報を提供
することにありました。今日の企業は、企業活動のグローバル化、
高度化、情報化及び著しい技術革新が進展する中で、厳しい
市場競争に打ち勝っていかなければなりません。
企業の存続・発展が不透明なリスク経済の下では、会計基準の
目的が、企業リスクの最大の負担者である投資家・債権者等の
意思決定に有用な財務情報を提供することにあるという点に
ついても、米国とIASBは同じ考え方です。
 
第3に、両者とも、経済活動の多様化、高度化、情報化等が
進展している中で、高品質な会計基準の開発が必要である
ことも、当然のことと受け止めております。

それでは、両者のどこに相違点があるのでしょうか。
 
その第1は、原則主義会計への対応にあると考えています。
一国の法制度や商慣行を前提にした会計基準は、その国に
とって目的適合性が確保された有用な会計基準であっても、
法制度や商慣行が異なる他の国では必ずしも有効に機能しない
ことから、世界共通の会計基準にはなり得ません。
 
国際会計基準であるIFRSが世界各国で受け入れられるには、
原則主義でなければならないという宿命を背負っているとも
いえます。原則主義であるIFRSが3千ページであるのに対し、
米国基準は10倍の3万ページもあるといわれています。
 
米国基準は、IFRSと異なり、ルール・ベースの会計基準で
業種別に詳細な会計ルールが定められております。
法制度、文化、商慣行の異なる多様な異民族で構成され、
かつ、訴訟社会の米国では、ルール・ベースの会計基準でないと
有効に機能しないということも納得できます。
 
それにしても、米国基準は余りにルール化し過ぎているとして、
エンロン事件後、米国でもルール・ベースへの反省の声が強
まりました。
 
米国のルール・ベースは永い年月にわたり積み重ねられた
利害調整の結果ですから、見直しも容易ではありません。
米国がIFRSを受け入れようと努力している背景には、ルール・
ベースの見直しのために、IFRSを受け皿として活用しようと
していると考えられます。

訴訟社会である米国では、ある程度のルール化が不可避であり、
原則主義会計のIFRSに歩み寄るにしても、それには限界が
あるのではないでしょうか。
 
逆に、IFRSは、それが世界各国で利用されるようになると、
各国がどこまで原則主義を維持できるのかという課題を
抱えています。