なぜ、いま、円高なの?

(2011年11月26日)

戦後最大の円高が日本企業を苦しめています。
景気が長期にわたって低迷し、国の借金が膨大にもかかわらず、
なぜ、未曾有といわれる円高なのでしょうか。
 
このコラムは、平成23年10月時点での情勢に基づくものです。
ご了承ください。では、話をします。
 
今回の急激な円高は、欧米の財政危機が発端になっています。
2008年のリーマンショック後の世界同時不況の際、先進各国は
大規模な景気刺激策を実施しますが、同時に財政赤字が拡大しました。

そして、ギリシャの財政危機に端を発し、欧州の財政危機、
さらに米国の財政赤字の悪化と景気減速の懸念が、
現在の急激な円高の原因になっています。
 
●ギリシャに端を発した欧州の財政危機
巨額な財政赤字を抱えるギリシャの国債にデフォルト(借金を
返済できない)の危険性が高まりました。
アイルランドやポルトガルも財政危機に陥り、多額の借金を抱える
イタリア、スペインの国債の信用不安へと波及しました。

もし、これらの国々の国債が返済不能となれば、国債を保有する
金融機関の経営が悪化し、欧州の景気が悪化するという不安が
広がったからです。

 
では円高のメカニズムがどうなっているのか話をします。
★‥‥円高のメ力ニズム‥‥★

・欧米の景気後退懸念が円高を招く
        ↓
★(1)欧州
・ギリシャの財政危機にはじまる欧州の財政危機
・金融機関の経営悪化の懸念

★(2)米国
・米国債務の悪化、米国債の格下げ
・米国景気の減速懸念

        ↓
世界経済の悪化の懸念から、株式が売られる
        ↓
世界同時株安
        ↓
世界中の投資資金が安全な資産を求め、円、フラン、金へと
流れている。
        ↓
★円高  ★スイスのフラン高  ★金価格高騰
 
●米国債の格下げと景気減速の懸念
リーマンショック後の景気刺激策は、米国の財政赤字を3倍に
まで増大させ、議会が定めた債務の上限を引き上げざるを得なく
なります。

これは、財政赤字の深刻さを物語る結果となり、世界一安全と
いわた米国債の信用格付けが最上級から一段階引き下げられ、
米国債とドルの信用が低下することになります。

さらに、依然として失業率が高く、住宅価格も低迷するなど、
景気の減速が懸念されています。
 
●欧米の景気減速がどうして円高を招く?
欧米の景気減速への懸念は、世界的な景気悪化による株価
暴落への不安につながり、世界中で株式が売られ、世界同時
株安を引き起こしました。そして株式を売った資金は、より安全な
資産を求めて、日本の円とスイスのフランや金に集まっています。

しかし、国の債務が800兆円を超え、長年、景気低迷で苦しんで
いるわが国の円が、なぜ安全なのでしょうか。

それは、日本の経常収支が黒字(経常黒字)だからです。
日本は輸入より輸出が多く、支払額よりも受取額が大きい、
言い換えると日本の国外に出て行くお金よりも、入ってくる
お金のほうが多いということです。

そのため、経常黒字国である日本の円は比較的安全とされ、
ドルやユーロを売って円に替えたい人が急増し、円の価値が
上がって、ドル安、ユーロ安、円高になっているのです。

スイスのフラン高も同じ理由です。
 
●円高の長期化は中小企業に深刻な影響
円高になると、輸入関連産業や海外旅行などが恩恵を受ける
一方、自動車、電機、鉄鋼など輸出関連産業には悪い影響が
あります。

日本は、輸出中心の産業ですから、海外に同じ物を売るので
あれば、円高よりも円安のほうが良いのです。

現在の欧米の状況から、円高は当分続くと予想されます。
円高の長期化は、中小企業の収益に深刻な影響を与えるとともに、
産業空洞化に拍車がかかるおそれがあります。

経済産業省の調査(平成23年9月1日公表)では、中小企業の
円高対策として最も多かった回答は「コスト削減」となっています。

また、業績への影響として、現在の円高水準(1ドル=76円台)が
半年以上続くと、中小企業の3分の1が、前年対比で20%以上の
減益になると予測しています。