中小企業と銀行との関係

(2011年02月01日)

今日は、中小企業と銀行との関係について
話をしたいと思います。
■中小企業経営者と銀行との関係


 現在行われている通常国会には、金融円滑化法期限延長の法案が出され
 ました。

 世界同時不況以降の資金繰り対策は、中小企業の実態に即した面も多かった
 ですが、来年度に向け、セーフティネット保証(現在名称「景気対応緊急
 保証」)の要件変更が予定されるなど、環境は変わってきつつあります。

 銀行とのつきあいをよくするためも、油断なく経営者自身の取組をして
 いきたいものです。

 何年も前のことですが、ある方がおっしゃっていたことを今でも
 覚えています。

 『人を動かす要因には、3段階ある』と。

 『それは、、、
  1.強い関係を築く
  2.正しいことを説得する
  3.やりがい、楽しみを共有する
  の3つ』。

 これは、主として従業員にいかに働いてもらうか、貢献してもらうか、に
 ついておっしゃっていたこと(従業員に対して、1.強いリーダーシップを
 もって引っ張る、2.正当なルールをつくり、従ってもらう、3.仕事の
 意義を理解してもらい、行動を促進する)なのですが、中小企業経営者と
 銀行との関係にもあてはまる、と痛感します。

 いいかえれば、経営者の方が銀行に対して、、、

 1.弱い立場だと、動かざるをえない(言うことをきかなくてはならない)
 2.正しいと信じてしまうと、動かざるをえない(従ってしまう)
 3.意義を互いに分かり合えなければ、動きたくとも動けない

 といえるのではないか、ということです。

 これらの状況にあてはまる経営者の方は、ほぼ銀行に対して苦手意識を持つ
 ことになり、せっかくの事業の成長のための思いやプランの実現可能性が
 低くなってしまいます。

 上述の3点をもう少し、掘り下げると、、、


■1.銀行には弱い立場である


 【兆候】

  ・銀行に行くと気が弱くなってしまう
 
  ・銀行員には人間関係上、強く言えない
 
  ・あらゆる要望に応えることが仕事になっている
   (悪い意味での下請体質)
 
  ・できれば担当者には会いたくないくらいだ

 銀行側が一方的に強い関係は、当然ながら銀行の都合により振り回される
 リスクが高まります。

 銀行が歩み寄ってくる情勢のときは協力関係、そうでないときは疎遠に
 なる、むかしから「借りたいときには、貸してくれない」などと言われ
 ますが、まさに銀行主導。

 もともと金を借りる立場は弱いものです。

 意識的にせよ無意識的にせよ、こうした関係ができあがりやすい間柄です
 ので、要注意です。


■2.銀行は正しいと信じて疑わない


 【兆候】

  ・会社の数字に弱い。だから人任せ。

  ・銀行の話や要望は、理解が難しいと感じている

  ・銀行は自社に悪いことはしないという思いがある

  ・だから、言われるがままに
 
 「ルールですから」「それは、無理です」等々、自信を持った表情で説得
 されると、誰しも正しいと信じ、従ってしまうことがあるかと思います。

 もちろん、銀行がだましているとは言いません。

 ただ、銀行のよって立つ「正しい」自体が不変のものではありません。

 むしろ、冒頭にも触れましたが政策や金融庁の方針転換、支店長や担当者
 の変更によっても頻繁に影響を受けると考えておきたいものです。

 企業は何十年と続くものです。ルールの適正さや金融環境は常に一定で
 あるわけがありません。
 
 経営者自身でも正しいのかどうかの判断基準を持つ、あるいは少なくとも
 経営者目線でサポートできる財務責任者や専門家を持ちたいものです。


■3.銀行とは分かり合えない

 
 【兆候】

  ・自社の事業分野は特殊だ、高度に専門的だと考えている
 
  ・銀行側の担当者の理解能力では難しい、と感じている。
 
  ・何度も同じ説明を求められる
 
  ・伝えていっても無駄だ

 たしかに、業務合理化による人手不足なのか、事業構造自体が複雑化した
 のか、銀行員の事業理解力が不十分と感じることは多いかもしれません。

 しかし一方で、銀行員のある調査結果によれば、

 「金融機関に強化を求める事項」

 としてあげられる上位の回答は以下の通りでした。

 【金融機関側が考える事項】

  1.必要時の迅速な貸出(36.6%)
 
  2.事業将来性を評価した貸出(17.1%)
 
  3.経営方針・事業計画の作成サポート(13.3%)

 【中小企業側が求めている事項】

  1.必要時の迅速な貸出(23.0%)
 
  2.金利・手数料の引下げ(21.6%)
 
  3.長期資金の貸出(15.9%)
 
 (中小企業庁委託「中小企業の資金調達に関する調査」
  2009年11月みずほ総研(株))

 両者とも最も多い回答が、「貸出」に関することなのは、金融機関の役割と
 して当然ですが、金融機関側の回答の2番目、3番目の回答に着目してみて
 ください。

 金融機関が考える事項2番目の「事業将来性を評価した貸出」は中小企業側
 では重要度が低く上位3位までには入っていません。

 さらに3番目の「経営方針・事業計画の作成サポート」は、中小企業側では
 わずか3.0%の回答しかなく、認識に10ポイントもの大きな開きがあることが
 みてとれます。

 つまり、銀行側としては、将来に向けての評価を、経営計画を対象に行って
 いきたいが、それは企業側に存在しない、あるいは不十分、ということです。

 以前から経営計画の重要性は唱えられていたものの、実際、銀行とのやり
 取りの中で経営計画への踏み込んだ言及は、昨今増加している実感が現場
 でもあります。

 その中で、銀行は事業の理解は無理だとあきらめることは、銀行からの歩み
 寄りの機会を逸することになります。

 弱い立場を嘆いていても仕方ありません。

 正しいだけではその時凌ぎの対応なのかもしれません。

 銀行と事業の将来の意義について共有し、行動を促しませんか。


■【参考】経営計画には何を盛り込む?

 
 先の調査では「経営計画の取組内容」として、金融機関が求めるものと、
 中小企業における策定実態についても触れられています。

 やはり、両者にギャップが大きい項目が多くあげられます。

 ・「売上・利益の計画」
 
 ・「資金繰りの計画」
 
 ・「経営理念、戦略・目標の明確化」
 
 ・「計画のフォロー・随時修正の実施」

 歩み寄りは、ここからです。