「儲け」を意識する

(2011年01月07日)

  経営者は利益を追わなければなりません。当たり前です。
 しかし一方で、 利益は出ているがなぜか資金繰りが厳しい
 状況に陥ってしまっている企業 もあります。
 
 なぜそんなことが起こってしまうのか、みなさんには頭に
 是非、入れておいていただきたいことを話をしたいと思います。
 
 ここでは、利益ばかり追っていると見失ってしまう、あることについて、
 話をしたいと思います。
 
 
■「利益」と「儲け」は違うのか?
 

 突然ですが、みなさんは「利益」と「儲け」の違いを認識されていますか?

 「『儲け』とは何ですか」

 とお聞きすると、ある程度の知識のある方なら
 
 「試算表や損益計算書において、売上-費用で算出されるのが『利益』」

 だと答えられる方が多いですが、「儲け」の考え方では、「利益」は
 「儲け」を算出するための一要素として使われるだけです

 では「儲け」はどの様に算出するのでしょうか?

 計算式であらわすと

 儲け=回収-投資

 となり、単純にいってしまえば、

 「(現金を)いくら使って、いくら回収できたか?」

 ということになり、とてもシンプルなものです。
 
   
■損益計画のみの経営計画の落とし穴


 みなさんの会社の経営計画は、損益計画のみですか?

 利益はほぼ達成できたのに、お金が増えていない。逆に、減っていることが
 ある。こんな疑問を感じたことはないでしょうか?

 また、金融円滑化法が施行されて、金融機関へ返済条件の変更を申し込む
 際、経営改善計画書を提出することが多くなっていますが、返済条件変更
 を依頼する側も依頼される側も、損益計画のみで返済条件を決定する、と
 いうのを、私がクライアント様からご相談を受けていると、よく見かけることがあり
 ます。

 売上・利益に重点を置いているから、経営者の意識が売上・利益重視に
 傾いてしまい、儲けることへの意識が希薄になっていると感じています。

 売上利益重視の一例を出しますと
 
 前期で

 年間固定費    5,000万円(償却なしと仮定)、
 変動費率        60%
 (売上原価が全て変動費、それ以外全て固定費とします)
 売上高      12,500万円(損益分岐点ギリギリ)、
 売上債権回転日数  (30日)
 在庫回転日数    (30日)
 仕入債務回転日数  (40日)

 という企業があるとします。

 ※損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)

 この企業が今期、売上高利益率5%を目標として、固定費・変動費率は
 変わらず、売上のみで達成しようとした場合、

 14,285万円の売上が必要となります

 ※目標売上高=固定費÷(1-(目標変動費率+目標利益率))
      
 仮にこの計画を達成できた場合、売上・利益としては

 売上高  14,285万円
 変動費   8,571万円
 固定費  5,000万円
 利益    714万円(売上高利益率5%)

 となり、目標を達成できて、良い結果が出たとも言えますが、

 ・営業マンが売上を重視するあまり、取引先の言いなりになり、
  平均回収サイトが10日伸び、売上債権残高が多くなってしまった。
  (売上債権回転日数 30日 売上債権1,027万円
   ↓
   売上債権回転日数 40日 売上債権1,565万円)

 ・売上を増やすために取扱品目を大量に増やしたことで在庫が
  膨れ上がり、入庫から売れるまでの平均日数が10日伸び、在庫高が
  多くなってしまった。
  (在庫回転日数30日 在庫616万円
   ↓
   在庫回転日数40日 在庫939万円)

 ・取扱品目を増やすために仕入取引業者を拡大させた結果、平均支払サイト
  が5日縮まってしまった。
  (仕入債務回転日数40日 仕入債務822万円
   ↓
   仕入債務回転日数35日 仕入債務822万円)

 売上・利益を重視する上で、上記3点が結果として出た場合、会計の
 「発生主義の原則」による損益においては、全く影響はでませんが、

 「儲け」の視点から見た時に、

 売上債権投資増 538万円
 在庫投資増   323万円
 仕入債務増   0円
 
 合計投資増   861万円

 となり、一方で損益計算上の利益をそのまま現金回収額と見た場合、

 714万円(回収)-861万円(投資)=△147万円(儲け)

 となり、この企業は、事業を拡大し利益は出ているのに、お金が減って
 しまう(儲かっていない)状態に陥っています。

 よって、経営計画は貸借・損益だけで作るのから一歩進めて、投資・回収の
 視点からも、計画を作成すると、とても良い経営計画になることでしょう。


■儲けてこそ事業は続けることができる


 勘定あって銭足らずの一例をご紹介しましたが、みなさんの会社はいかがで
 しょうか?

 売上・利益が必要ない、などと言っているのではありません。

 利益は成果のバロメーターであり、企業としては必要なものです。

 ただ、その全てにおいて、「儲け」の視点も合わせて、経営活動に取り
 組んでいただきたいのです。

 今回ご紹介した3つの回転日数の指標は、いかに効率良く投資したものを
 回収しているか、判断できる指標のひとつです。

 企業はボランティアで事業活動を行っているのではありません。

 儲けなければ、事業を存続させ成長させることはできないのです。